コイウタの話…辻三蔵の「ウィークエンダー
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 5月25日(金)正午、私は奥平師と昼食を共にしていた。「コイウタは正海(松岡)で遠征することが決まったよ」と奥平師が笑顔で話していたときに、携帯電話が鳴った。コイウタの共同馬主の吉田照哉オーナーからだ。「昨日は松岡騎手で行くと決めていたけど、今回は内田博騎手を乗せたい」と申し訳なさそうに話していたという。前日の段階ではオーナーとの話し合いでキャッシュコールマイルは引き続き、松岡正海騎手に決定していた。奥平師は本人に伝えて、所属している相沢師にも挨拶したという。
 事態が急転したのは24日(木)に、ピンクカメオ(国枝厩舎)のアメリカンオークス遠征が決まったことだ。ピンクカメオは大井の内田博騎手が騎乗することになった。吉田照哉オーナーは彼の腕を買って、頼む形になった。オーナーの重い口調からも苦汁の決断だったことが伺えたという。奥平師にはその旨を松岡騎手に伝えて欲しいとオーナーから依頼された。
 奥平師は「一度、松岡騎手に頼んだので、内田博騎手が当日、騎乗できるのか確認して欲しい」とオーナーに話した。改めて、内田博騎手が快諾したことを受けて、奥平師は日本ダービー翌日の28日(月)に松岡騎手に話すことを決めた。「ダービーの前に正海に話すことはできない。だから、辻ちゃんも月曜日まで誰にも話さないでくれ」と口止めされた。
 29日(火)、ピンクカメオアメリカンオークスへの遠征を断念することが明らかになった。翌30日(水)朝、奥平師は「正海には月曜日に話した。こんなことになるとは思わなかったが、正海にはこの悔しさを糧に更に上を目指して欲しい。ただ、俺達もプロフェッショナルだ。コイウタを無事に出国させて、現地で万全に仕上げることが仕事だ。いい状態で出走させることだけを考えていく」と決意を新たにしていた。
 6月3日(日)に改めて吉田照哉オーナーが内田博騎手に打診して、コイウタに騎乗することが決まった。ハリウッドパーク競馬場は1周1600m、直線300mと福島競馬場(1周1600m、直線292m)とサイズはほとんど同じだ。小回りコースは地方競馬で騎乗している内田博騎手の方が上手いという判断もあったそうだ。内田博騎手はオーロカップコイウタに騎乗して2着した実績もある。6月5日現在、地方競馬通算2910勝、中央競馬127勝を挙げている3000勝ジョッキーだ。当初はヴィクトリアマイルを勝った「ご褒美」の遠征だったが、オーナーが勝つために最善の手を尽くしたことになるのだろう。
 松岡騎手は「自分をリセットする」ために1回福島1週目(16、17日)終了後にアイルランドに遠征する。『酔いどれない競馬』で彼の前向きな姿勢を見たときに、逆に勇気づけられた。「日本から離れることで自分を見つめ直すことができます。アイルランドから帰ってきたときに新たな気持ちで競馬に望めるんですよ。井崎先生や辻さんも休んだ方が予想が当たりますよ」と笑みを浮かべていた。
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