「師と弟子」辻三蔵の「ウィークエンダー
 「あんな競馬じゃ敗因はわからん!」大久保洋調教師が怒りを露わにした先週のフェブラリーSオーロマイスターは+18キロでの出走。個人的には「馬体が立派過ぎる」印象を受けたが、大久保洋調教師は「少し重いと言ってもケイコはやっているのだから中身は出来ている。ただ、それ以前にあの位置取り(後方14番手)では話にならん。前に行って負けたのなら敗因は太目とわかるが、勝負に行っていないのだから敗因もわからん。だから、レース後、ユタカ(吉田豊騎手)を叱責した」と語気を強めた。
 今年で66歳になる大久保洋吉調教師の勝負に対する執念は衰えていない。今回も本気で勝ちに来たからこそ、消極的なレース運びに激怒した。逆に、ジャパンカップダートのように勝ちに行って負けたときは「敗因は距離だな」とサバサバしていたものだ 。
 弟子のために本気で怒るのは愛情表現の裏返しでもある。ユタカが被害を受けたときには矢面に立って抗議する。師匠が弟子を尊重し、弟子が師匠を尊敬する。師匠と弟子の関係で形骸化した今の競馬社会では極めて稀な情に熱く、繋がりが深い師弟関係だ。
 定年まで残り4年。「俺の車のナンバープレートの番号は10−15だ。JRAGI10勝*1は達成したが、地方*2を合わせたGI・15勝まであと2勝足りない。1000勝(現在813勝)は諦めたが、GI・15勝は達成したい」と意欲を燃やす。「鞍上は?」の問いに「もちろん、ユタカしかいないだろう」とニヤリと笑った。