暗黒時代の功労者

広島東洋カープは9月20日倉義和捕手(41歳)、広瀬純外野手(37歳)が今季限りで引退すると発表した。
25年ぶりのセリーグ優勝を飾った年に、カープの暗黒時代を支えた功労者の引退は寂しく思う。

倉義和捕手は京都産業大から1998年にドラフト5位で入団。
通算成績は719試合出場。打率.217、339安打、23本塁打
黒田博樹メジャーリーグに移籍する前は「専属捕手」としてバッテリーを組んだ。
今年から2軍バッテリーコーチを兼任。19年目の今季は入団以来初めて1軍昇格がなかった。
昨年、黒田博樹が日本球界に復帰したときには
「黒田さんが広島に帰ってくるまで現役生活を送るのが目標だった。もう一度黒田さんとバッテリーを組みたい」と話していた。
25日に黒田が登板予定だが、もし可能ならば黒田&倉の黄金バッテリーを最後に見たい。

広瀬純外野手は法政大学から2001年にドラフト2位(逆指名)で入団。
通算成績は977試合出場。打率.273、595安打、51本塁打
今季は昨年に続き、1軍出場がなかった。
2010年にレギュラーを獲得し、135試合に出場。自身初の打率3割(.309)を記録。
持ち味の強肩を生かしてゴールデングラブ賞を受賞した。
2013年には15打席連続出塁のプロ野球記録を樹立。
この年は負傷離脱したエルドレッドに代わって4番を任された。
得点時に見せる敬礼ポーズ*1丸佳浩が引き継いでいる。

長いもみあげが特徴で、そのもみあげ(ちゃり)からチャーリーの愛称を持つ。
チャーリー路線は菊池涼介が継承している。
今年の優勝を牽引したキクマルコンビに絶大な影響を与えたチームリーダーだった。

カープがBクラスの常連だった2000年代は引退興行がシーズン終盤の唯一の楽しみだった。
1998年から2012年までBクラスに沈んでいた15年間。
旧広島市民球場マツダスタジアムでは毎年、引退試合が行われていた。

野村謙二郎浅井樹緒方孝市佐々岡真司高橋建石井琢朗
満員の観客がスタンドを埋め尽くしたが、引退した選手たちに笑顔はなかった。
Bクラスが続くことへの責任感。夢半ばでチームを去る寂しさ。
悔恨を球場に残したまま引退することの歯痒さが伝わってきた。

16年ぶりにAクラスに入った2013年に引退試合を行ったのが前田智徳だ。
8回裏の最終打席の後、9回表にマツダスタジアムで初めて守備についた。
打つ姿も守る姿も真剣なのだが、どこか楽しんでいる雰囲気がある。
苦笑いの前田。泣き笑いの前田。笑顔の前田。

球場を包む観客も涙ではなく、笑顔に包まれている。
カープは16年ぶりにAクラスに入ることができました。
この節目を境に強いカープとなって、未来のカープが明るいことを祈って引退します」
前田は未来を後輩に託して引退することができた。
前田の言葉に導かれて明るい未来が感じられるこそ、球場に笑顔が溢れていた。

今年は9月10日に優勝が決まったので、引退試合を笑顔で行うことができる。
マツダスタジアムでは9月22、24、25日の3試合が残っている。
最多勝タイトルに向けてジョンソン、野村、7年連続二桁勝利がかかる黒田が登板予定だ。
カープは9月17日から3連敗しているが、マツダでの3試合は絶対に負けられない戦いになる。
倉、広瀬が安心して引退できるように、強いカープで今シーズンを締め括ってほしい。

*1:合同自主トレを行ったレスキュー隊との約束から行う