2016年ドラフト1位で入団した岡田明丈は、
在籍した3年間、セリーグ優勝の経験しかない。
マツダスタジアムには毎年200万人を超える大観衆が訪れる。
3ボールなど投手不利なカウントになれば、
観客席から拍手が起こり、励ましてくれる。
現役時代に優勝できないまま引退する選手が多い中、
恵まれた環境で育った。
しかし、4月11日(木)ヤクルト戦2回表。
先頭打者の7番村上から4者連続四球で押し出し。
9番寺原、1番太田には1球もストライクが入らず、
観客席から怒号と悲鳴が飛び交った。
拍手が起きたのは押し出しする前の1度だけだ。
岡田明丈の突発性四球病は今に始まったことではない。
「甲子園の悪夢」と呼ばれた2017年5月6日(土)阪神戦。
5回表の時点でカープが9対0と圧倒的なリードを奪いながら、
先発岡田が突如乱れて9点差を逆転された。
この試合で首位陥落。
過去に9点差以上の逆転負けしたチームに優勝例はない、
という現実をつきつけられた。
あれから2年。
連敗阻止の期待をかけられた岡田は、
重圧に押し潰されて自壊した。
岡田は昨年後半から先発失格の烙印を押されて、
クライマックスシリーズ、日本シリーズではリリーフに回っていた。
今年のオープン戦も調子はあまり良くなかったが、
過去3年の実績を買われてローテーションに入った。
しかし、現実は厳しかった。
打線の援護で勝てた昨年までとは違う。
勝利を呼び込むためには自らの投球で、
野手を鼓舞しなければならない。
先発2戦目で2軍降格。
昨年は、不調に陥った薮田和樹を4月30日まで1軍に置いたが、
復調の兆しをつかめぬままシーズンが終わった。
薮田の反省を生かした形だ。
佐々岡真司投手コーチの「先発10人構想」が実を結ぶときがきた。
2軍で先発調整していたアドゥワ誠、
昨年は1軍で登板機会がなかった矢崎拓也が1軍昇格。
複数イニングのリリーフ登板で無失点に抑えた。
新外国人のレグナルト(7試合8イニング、防御率0.00)、
楽天から移籍してきた菊池保則(5試合6.2イニング、防御率2.70)は、
ビハインドゲームでも集中力を切らさず、試合を作った。
セリーグ3連覇の陰で懸案だった、
投手陣の立て直しがシーズン序盤に出た。
常勝球団の再建期が緩やかではなく、いきなり訪れた。
圧倒的な打撃力で勝ってきた「逆転のカープ」はもう存在しない。
緒方考市監督が就任以来、掲げている
「投手を中心とした守り勝つ野球」に変革する好機だ。
昨日の試合では3回裏から松山弘平の守備位置を1塁から左翼に移した。
1塁守備でセリーグ最多の4失策。
今年初めて左翼を守り、6回裏2号2ランを放った。
4月上旬から投手編成を含めて再建を図る。
接戦の勝ち試合に登板するのは一岡竜司、フランスア、中崎翔太。
特に2015年から4年間257試合(1年平均64試合)に登板した、
クローザー中崎翔太はセーブシチュエーション限定。
勝ち試合を確実にモノにできるよう、疲労を最小限に抑える。
昨年までは多少のビハインドでも勝ちに行く姿勢を示したが、
勝ち試合、僅差の試合、負け試合の分業制を推し進める。
カープファンは昨年までとは違う現実を受け止めている。
観客席からの怒声、悲鳴にはいろいろな思いがある。
加熱するチケット争奪戦を制し、
もしかしたら今年最初で最後のマツダスタジアムでの観戦が、
不甲斐ない試合だったら悔しくて悲しくなる。
一番楽しいのはカープが勝つことだ。
「勝つことは偉いことだ」(将棋・塚田正夫名誉十段)
勝利は偉大であり、尊敬すべきこと。
勝つためには並大抵ではない苦労も必要だ。
この言葉の重さを実感している。