おもひでの名勝負

sanzo20043212015-10-19

10月19日(月)発売の『週刊競馬ブック』菊花賞特集)で「おもひでの名勝負」を執筆している。
同じ競馬専門紙の『ホースニュース・馬』社出身の私にとって、競合紙だった『競馬ブック』で原稿を書くことは夢のような話だ。
業界購読率が100%に近い『週刊競馬ブック』は、トレセンにいる大半の人が手に取ると考えていい。
大きなプレッシャーを感じながら取り上げた題材は恩師の川上信定(かわかみ・しんてい)先生との思い出が詰まった2001年の菊花賞マンハッタンカフェ)にした。
川上先生は大学時代に世話になった恩師だ。

フリーの作家として小説、ルポ、エッセイ、紀行文を川上信定名で、文芸評、書評を植村修介名で執筆。
幅広い分野で活躍しており、競輪評論家として『競輪入門』(POCKET BOOK)、花火評論家では『花火大会に行こう』(とんぼの本)、朝めし評論家で『本当にうまい朝めしの素』(講談社文庫)を出版。
川上先生は作家の阿佐田哲也さんの競輪仲間で、『阿佐田哲也の競輪教科書(バイブル)』(徳間書店)でも執筆に携わっている。

学生のとき、明治大学マスコミ研究室に所属していた私は講師の川上先生から論作文の書き方を教わった。
「最初の一行で読者を引き込め」
「ディティール(細部)までこだわり、文章に説得力を持たせる」
「作文は自分に引きつけて書け。一般論にするな」
川上先生の教えは今でも文章を書く指針になっている。

今回は「自分に引きつけて書く」ことにこだわった。
なぜ、辻三蔵の思い出の馬(ウィキペディア参照)がマンハッタンカフェなのか(今なら間違いなくサンカルロだが…)。
マンハッタンカフェの経歴を振り返ることで記憶が蘇えり、川上先生と交わした言葉を書き起こした。
師匠の井崎脩五郎とのよもやま話は各種メディアで話しているが、川上先生のことは今まで書いたことがない。
川上先生が亡くなってから10年が経ち、自分のルーツを振り返る意味でも大切な原稿になった。
川上先生は「春風秋雨」という言葉が好きだった。
「綺麗に咲いた春の桜も風で散り、美しい秋の紅葉は雨で落ちる。人生はなかなか思い通りにいかないものだ。だからこそ、出会ったことが縁のなのだから、その出会いを大事にすべきだ」。
川上先生との出会いを1頭の競走馬を通じて書く場所を与えて下さった『競馬ブック』編集部の皆様に感謝したい。