雪の日と月曜日は…辻三蔵の「ウィークエンダー
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東京競馬は3日に続いて、10日も降雪で中止になった。2週続けて、月曜日に代替開催されたが、ひとつだけ大きく違うことがある。3日は当日輸送になる美浦所属馬の馬運車が午前4時に東京競馬場へ向けて出発した。中止決定を受けて常磐自動車道谷和原インターで折り返し、全車両が美浦トレセンに戻った。しかし、10日は午前3時の段階で出発見合わせを指示しており、美浦から東京へ出発した馬運車はなかった。 
根岸Sで命を落としたトウショウギアは賢い馬だ。馬運車に乗ると、レースが近いのがわかるという。3日も馬運車に乗り、気合が乗ってきたが、途中で引き返すことになった。一度、火がついた闘志を消すのは簡単なことではない。美浦に戻ったギアはいつも以上に馬房で暴れていたと言う。翌日も競馬場に着いてから装鞍に手こずるほど、興奮状態だった。
 トウショウギアはレースで2番手を追走したが、3コーナーで外から他馬に寄られたときに外へ逃げてしまった。このとき、右第2指関節脱臼を発症し、安楽死処分となった。 いつもより神経が過敏になっていた分、過剰に反応してしまったのだろう。『馬』紙面上で推奨馬に挙げた私はギアの姿を最後まで見ることはできなかった。
 トウショウギアは坂路調教班にとって、難敵だった。ケイコ駈けするギアにとって、調教時計は参考にしかならない。問題なのは走りに集中しているかどうかだ。真剣に走っていれば、実戦に直結する。前週の調教を思い出し、好調時のイメージと比べながら、追い切りを見る。ギアとのやり取りはいつも真剣勝負だった。
 先週は寂しい1週間だった。しかし、また、新しい1日が始まる。ギアが歩めなかった明日を私は生きている。だからこそ、今日という日を大事にしなければいけない。月曜日は先週と同じように、雲一つない青空が広がっていた。
 『馬』本紙予想で新馬戦を担当しているが、月曜日は東京2Rマルチメトリック、6Rティアップドラゴンを本命にした。どちらも奥平厩舎だけに本命にして当然と思われるが、話を聞いている分、逆に迷うときもある。だから、ギアとのやり取りを思い出しながら、追い切りを見て、決断した。坂路での動きが前週と比べて、格段に良くなっている。有力馬が軒並み除外された幸運もある。月曜日に延期された影響が心配だったが、両馬共に強い内容で勝利を挙げた。
 共同通信杯は『馬』紙面上で本命にしたショウナンアルバが勝った。先週は辛いことばかりだっただけに、こんなに幸せなことがあるとは思いもしなかった。「辛い」という字に横棒を一本、足せば、「幸せ」になる。ギアがその一本を足してくれたような気がした。
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