この風!この肌触りこそ戦争よ!辻三蔵の「ウィークエンダー
人気blogランキングへお願いします。
 私が『馬』社に入社した1998年以来、有馬記念では関東馬が6勝している。2連覇を達成したグラスワンダーシンボリクリスエスに、マンハッタンカフェゼンノロブロイと怱々たる名前が並ぶ。そして、2005年を除けば、必ず3着以内に関東馬の名前がある。2000年3着ダイワテキサス(13番人気)、2001年2着アメリカンボス(13番人気)、2002年3着コイントス(8番人気)と実績はあるのに、人気の盲点になっていた。
 私がショックを受けたのは入社1年目、グラスワンダーが初めて有馬記念を勝ったときだ。目の前で追い切りを見ていたにも関わらず、状態の良さを見抜けなかった。それどころか、先入観で早熟だと決め付けてしまった。私はメジロブライト(2着)の単勝を買っていたが、情けなくて仕方がなかった。関東馬が勝ったのに馬券を買っていない。これでは美浦で追い切りを見ている意味がない。恥ずかしい気持ちで一杯だった。その日以来、追い切りを見るときは雑念を消して、馬の気配を感じ取ることを重視している。勝った馬に共通しているのは有馬記念に賭ける執念が伝わってくる。見ている者の心を揺さぶる威圧感のことだ。
 今年の関東馬の主役はダイワメジャーロックドゥカンブだ。ダイワメジャーマイルCSの頃のような悲壮感がなく、肩の力が抜けてリラックスしている。2500mと若干、長い距離を走るのだから、これぐらい、落ち着いているのはいいのだろう。ただ、昨年の有馬記念は安藤勝騎手が最高の騎乗をして3着だった。ドリームパスポートメイショウサムソンより先着したのは地力がある証拠だが、同世代のポップロックに先着されたのは距離適性の差だ。状態の良さは認めるが、3番手評価にした。
 そうなると、ロックドゥカンブの方が魅力だ。菊花賞から全ての面に置いて、上積みが見込める。日曜日が雨予報なだけに重馬場が得意なのも有利だ。マイケル=キネーン騎手に乗り替わるのも大きな魅力。キネーン騎手と師弟関係を結んでいる松岡騎手に話を聞いたら、「たぶん勝ちますよ。とにかく研究熱心だし、世界中のどの競馬場に行っても結果を出せる。プロ中のプロですよ」と太鼓判を押していた。水曜日の段階では本命にするつもりだったが、木曜日に追い切りを見たときに心が揺らいだ。先週、長めからビシッと追ったのが、直前が終い重点なのはわかる。キネーン騎手が軽く仕掛けてからの反応も良かった。非の打ち所がない追い切りだ。しかし、必死さが伝わってこない。もっと、厳しく、激しく追って欲しかった。
 3歳暮れに有馬記念を制したマンハッタンカフェ菊花賞時(1着)よりも、強い調教を課していた。グラスワンダーが3歳で有馬記念を勝ったときもムチが何発も飛んでいた。グラスワンダーマンハッタンカフェシンボリクリスエス古馬との対戦実績がある。しかもGIを勝った実力もある。それでも一流古馬に勝つために、厳しい鍛錬をこなした。ロックには古馬との対戦経験もなければ、GI実績もない。だからこそ、ケイコで有馬記念に賭ける気迫が見たかった。
 ロックと同じような境遇を歩んだ馬にはゼンノロブロイがいる。菊花賞(4着)では馬群に包まれて、1番人気で敗れている。捲土重来を期した有馬記念では2連覇を目指すシンボリクリスエスと併せて、芝コースで1マイル(1600m)追った。先行するシンボリクリスエスゼンノロブロイが必死に追いかけていた光景が今でも目に焼きついている。それでもシンボリクリスエスに大差の3着に敗れた。それぐらい、一流古馬との対戦は厳しい。有馬記念では年度代表馬を目指して、古馬と3歳牝馬を死力を尽くす。有馬記念は戦争だ。
人気blogランキングへお願いします。