ディープ!ファンタスティック!辻三蔵の「ウィークエンダーデットーリも大興奮!
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 ディープ!ファンタスティック!デットーリも検量室で祝福するほど、ディープインパクトは強かった。ディープが戻ってきたときにスタンドからは「ディープ!ありがとう」と声援が飛んだ。武豊騎手はウイニングランで何度もガッツポーズをし、池江泰郎調教師は「ディープに感謝です」と感激の涙を流した。検量室にディープが帰ってきたときには自然と拍手が起きた。誰もが待ち望んだ勝利だった。挫折があったからこそ、この勝利もひとしおだ。
 しかし、馬体重の発表が場内に流れたときにどよめきが起きた。馬体重は436キロと過去最低。確かにトモの辺りが心持ち、寂しく見えたが、これはいつものこと。元々、パドックでは良く見せないタイプ。春の天皇賞で438キロで勝っているように数字ほど、細く感じなかった。それより驚いたのが凱旋門賞時のように気合が乗り過ぎることもなく、リラックスしていたことだ。馬体は一戦ごとに研ぎ澄まされていくが、気性はどっしりと落ち着いている。凱旋門賞の挫折がこの馬を一回り成長させた。
 レースはコスモバルクがハナを切って、前半5F61秒1のSペース。ディープは他馬を意識することなく、いつも通り、最後方を追走。4コーナーから徐々に上がっていくと、手応えの悪いウィジャボードを外から被せて直線へ。ダービー同様、ただ一頭、大外を悠然と走り、一気に突き抜けた。上がり3Fはメンバー最速の33秒5。Sペースの瞬発力勝負になれば、ディープより速い脚を使う馬はいない。凱旋門賞では後ろにいた馬に差されたが、日本の高速馬場ではディープに敵う馬はいなかった。
 ジャパンCは少頭数に加えて、Sペースだったこともあり、勝ち時計、上がり3F共に(2分25秒1、3F33秒5)は日本ダービー(2分23秒3、3F33秒4)より遅い。しかし、今回はレースレベル云々は問題ではない。
ディープが強い競馬で勝ったことに意義がある。武豊騎手はレース後のインタビューで「飛ぶ」という言葉を使わなかった。開口一番、「今日はディープでしたね。勝てて本当に良かった。今日はディープらしい、本来の走りができた」と安堵の言葉を発した。そして「フランスで残念な結果になったのに、ファンが温かい応援をしてくれてうれしかった」とファンへの感謝の気持ちを述べた。軽々しく、「飛んだ」という言葉を使わなかった意味は重い。
 凱旋門賞後、「国民的英雄」は地に落ちた。「普通の馬」のように叩かれて、非難された。陣営にとって、手の平を返すようなバッシングは辛く、苦しかっただろう。それだけに武豊騎手は「絶対に勝たせないといけない」と断固たる決意でレースに臨んでいた。今回の勝利の重さを噛み締めているからこそ、安易な表現を使いたくなかったはずだ。栄光から滑り落ちたディープは挫折を乗り越えて、万人の心を打つ勝利を挙げた。この勝利でディープは真の「英雄」になった。
 ウィジャボードパドックを見たときにオヤッと思った。火曜日にパドックでスクーリングしていたときの滑らかな歩様がない。前脚の出が硬く、後脚の踏み込みが浅い。466キロと体は昨年(456キロ)より充実していたが、木、金と7Fから時計を出した反動が出たのかもしれない。レースはデットーリかディープをマークして進めようと思ったはずだが、ディープは更に後ろ。4コーナーで手応えが怪しくなると、直線ではディープに外から被された。それでも馬群がバラけてから外に出すと、上がり3F33秒9の末脚で3着まで追い込んだ。ジャパンカップが今年9戦目。やはりピークは過ぎていたのだろうが、それでもこれだけ走るのだからさすがに「世界で一番強い女」だ。欧州年度代表馬が力を出し切ったおかげでディープの勝利に価値が出る。2年続けて参戦してくれた彼女には感謝の言葉を送りたい。
 ハーツクライは残念な結果になった。しかし、「ノド鳴り」をレース前にカミングアウトした橋口調教師には敬意を表する。橋口師の勇気ある決断があったからこそ、ファンはこの敗戦を受け入れられる。日本はファンあっての競馬なのだから。
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