会心の一撃辻三蔵の「ウィークエンダー
 「ひいきの厩舎だから本命に打ったと思われたら悔しいので、期待に応えられて良かったですよ」小島茂調教師の言葉からは充実感が伝わってきた。
 エリザベス女王杯クィーンスプマンテ(11番人気1着)に本命を打った。小島茂調教師は「辻さんなら本命打つかなと思って、テレビ(KEIBAコンシェルジュ)を見ていましたけど、やっぱり打っていましたね。自信はありましたが、人気の割には結構、本命を打っている人がいましたし、記事を見て更に自信を深めたのはありますよ」と笑顔で話す。
 小島茂調教師にはこのレースに賭ける意気込みを伺っていたし、月曜日から栗東に出張していた田中博康騎手からも、やる気が伝わってきた。京都大賞典のレース内容で、陣営が手応えを掴んでいたのを感じ取った。何よりも、ブエナビスタに恐れることなく、勝ちに行く競馬を挑んだのが最高の結果に繋がった。
 もちろん、私も自信の本命だった。『穴党OnLine』の予想コラムを全文引用したい。
『「今度は絶対に逃げますよ」小島茂調教師が断固たる決意で臨む◎クィーンスプマンテ。前走の京都大賞典(8着)は本番に向けての試走。好スタートを切ったが、テイエムプリキュアが追っ付けてハナに立つと、離れた2番手を追走。テイエムプリキュアの1000m通過が59秒1、クィーンスプマンテの通過タイムは推定で60秒前半。実質的にはマイペースの逃げを打つ形になった。直線入り口で先頭に立ったが、ラスト200mを切ってから後続に捕まった。それでも着差はわずか1秒差。牡馬相手に見せ場を作ったのは大きな自信になった。
 前回がトライアル仕様なら、今回はメイチの仕上げ。全休日を除けば、毎日、坂路を登ると、直前追い切りも坂路でビシッと追った。今回が4度目の栗東滞在になるが、今までで一番、ハードに攻めている。小島茂調教師も「納得がいく調整ができた」と自信を持って送り出す。
 今回はテイエムプリキュアの出方を一切、気にせず、とにかく逃げる。体力に自信があるからこその逃げ宣言。ブエナビスタを中心に、後方で牽制し合えば、マイペースの逃げが打てる。当然、9分の仕上がりだった京都大賞典よりも粘りは増す。200m距離が短縮されるのも計算に入れている。京都大賞典を使ったのはGI制覇への布石だ』
 コラムを読んでもわかるように、陣営の想定通りに事が進んだ。「逃げ宣言」したのはテイエムプリキュア陣営への牽制。しかも前走で、テイエムプリキュアがハナを切ったのは、鞍上がクィーンスプマンテで、みなみ北海道Sを逃げ切った荻野琢騎手だったからだ。「逃げたらしぶとい」のは荻野琢騎手が一番、わかっている。だからこそ、強引にハナを奪ったのだ。小島茂調教師は「ウチの馬がハナを切ったら、熊ちゃん(熊沢騎手)なら競りかけてこない」と話していたが、テイエムプリキュアが共存する道を選ぶのは想定できた。
 エリザベス女王杯の1000m通過は60秒5。これは京都大賞典の通過タイムとほぼ同じだ。田中博騎手は前走と同じイメージでハナを切っている。京都大賞典の2200m通過タイムが2分12秒3。このときはラスト2ハロン目を12秒8でまとめている。小島茂調教師が「状態面の上積みを加味すれば、2分11秒台にも対応できる」と話していたように、京都大賞典のイメージで乗れば、勝ち負けできる計算を立てていた。
結局、エリザベス女王杯の勝ち時計は2分13秒6だった。小島茂調教師が「思ったより勝ち時計が遅かった。2分11秒台でも乗り切れる自信があっただけに、展開に恵まれたと言われるのは悔しいね」と悔しさを滲ませた理由もわかる。
 小島茂調教師はエリザベス女王杯から逆算して、戦略を練っていた。その過程にはブエナビスタが絶対的な存在ではなくなったこと、レッドディザイアジャパンカップ参戦と、様々なファクターが加わった。その上で、勝つための戦略を考え抜いた。出走するからには、勝利を狙うのは勝負の鉄則だ。 
 小島茂調教師は「自信を持って臨んだ訳ですから、してやったりという気持ちはありました」と胸を張った。ブラックエンブレム秋華賞制覇で、「GIを勝つ仕上げ方を学んだ」と話していた通り、会心の勝利だった。私も馬券は単複、馬連(総流し)を取った。ブエナビスタとの3連複3連単流しを取り逃したのは痛かったが…、笑顔で厩舎に行くことができる。
 ところで、クィーンスプマンテは11番人気で勝ったが、今年の古馬牝馬重賞8レースで11番人気馬は[1・2・2・3]と半数以上が馬券に絡んでいた。前日発売から11番人気をテイエムプリキュアクィーンスプマンテが激しく競り合っていた。しかし、最後の最後にクィーンスプマンテが11番人気に躍り出た。この時点でクィーンスプマンテの勝利は決まっていたのかもしれない。