「会心の…」辻三蔵の「ウィークエンダー
 「溜めても速い脚が使えないので前目の位置で競馬をしたいですね。他馬の出方次第ですが、ペースが遅ければ、ハナを奪うつもりです。瞬発力勝負では分が悪いですから、直線では後続を気にせずに、先にロングスパートをかけますよ」(北村宏騎手)。
 新潟記念は本命に推したサンライズベガ(9番人気)が2着に激走。とはいっても、2年前の新潟記念でクビ差の2着、昨年(3着)も秒差なしの大接戦を演じたコース巧者。最近2戦の大敗が嫌われて人気を落としたが、馬場の悪い所を走り、嫌気を出した七夕賞、ハイペースに巻き込まれた小倉記念の結果は度外視できる。敗因が明確だっただけに、北村宏騎手は週中から作戦を練り、一発狙っていた。
 意表を突く逃げは北村宏騎手も想定済み。逃げ馬不在を見込んだ武豊ナリタクリスタルが機先を制して先制攻撃を打ったが、躊躇なくハナを取り切った。最初の1ハロンは13秒2とゆっくり入り、2ハロン目から11秒0−11秒9−12秒0とハイラップを刻んで後続を引き離していく。隊列が落ち着いたところで一息入れて、4コーナー手前からロングスパート。ラスト4ハロンは[11秒7−11秒2−10秒9−12秒0]と後続が脚を使うタイミングを見計らって、早めに突き放した。
 直線では内目の悪い部分を避けて、馬場のいい外目に出し、ナリタクリスタルに馬体を併せに行ったのも作戦通り。北村宏騎手は昨年の新潟記念のレース映像を見直して、ナリタクリスタルの二枚腰を警戒していた。ナリタクリスタルとの競り合いに持ち込み、ラスト50mで一旦前に出たが、ゴール寸前、差し返されてしまった。北村宏騎手が思い描いた通り、完璧な競馬ができていただけに、悔しい敗戦だっただろう。
 思惑が外れたのはナリタクリスタルが予想以上に前の位置取りにいたことか。サンライズベガが作り出した前残りの流れに乗じて、理想的なポジションが取れた。しかも格好の目標が目の前にいたことで最後まで集中力を切らさずに走ることができた。
 昨年の新潟記念で上位を占めた1着ナリタクリスタル(5番人気)‐3着サンライズベガ(4番人気)との組み合わせで馬連10,880円(5番人気‐9番人気)の高配当になった。私自身、ナリタクリスタルの評価を下げたのが反省材料だ。サンライズベガに本命を打ったのは逃げ経験(2009年ジューンS2着)があるからだが、ナリタクリスタル武豊騎手がハナ、2番手の形で[2・1・0・0]と好成績を収めていた。1番人気だった小倉記念(6着)と違い、5番人気の低評価で思い切った競馬ができる立場でもあった。展開が読み切れないときこそ、武豊騎手の経験と技量を買うべきだった。
 『KEIBAコンシェルジュ』は4週連続出演になったが、最終日(8月28日)は本命馬が予想8レース中5レースで連対した。大庭の万馬券から始まったアフターケアプランの的中記録も3週に伸ばした(8.21新潟12R村田◎ベストラン4番人気2着→8.28小倉12R川田◎タガノシビル2番人気1着)。残念だったのは北村宏騎手の会心の騎乗に報いる予想ができなかったこと。後は「今週のオーバ」を2つ外したことだな。