口惜

「あそこまで来て勝てなかったら、ジョッキーが追い負けたと思っています。本当に悔しいですね」
北村宏騎手が口惜しさを滲ませた今年の関屋記念
 5番人気のエーシンリターンズに騎乗した北村宏騎手は1番人気のドナウブルーとマッチレースに持ち込んだが、「勝ち馬を目標に追ったが、最後は捻じ伏せられる形で」クビ差競り負けた。
 道中は単騎逃げを打ったレッツゴーキリシマ、2番手に付けたドナウブルーを見ながら好位3番手を追走。「レッツゴーキリシマには乗ったことがあるので、あまりペースは速くならないと感じていました。だからこそ、多少無理をしてでも好位置を取りに行きました。1枠にいた大野(キョウエイストーム)、大庭(アスカトップレディ)に前に入られると厄介なので必死でしたね」。
 前半1000m通過は58秒7と数字自体は速いが、「体感速度では緩く感じましたね」と話す。「今年の新潟開催は晴れの日が多く、芝の状態が凄くいい。こんないい状態で関屋記念が行われるのは初めてですから、1分31秒5のレコードタイムが出たのでしょう。これだけ速い馬場では前に行かないと勝負にならない。位置取りも隊列も自分が思い描いた通りに乗れましたね」。
 完璧に乗れても勝てないのが競馬だ。それでも勝つために最善の策を練り、能力を最大限に引き出した騎乗なら、馬券を買ったファンも納得するはずだ。
 関屋記念ではエーシンリターンズに本命を打つか、締め切り直前まで迷った。中京記念の大敗は太目残りに尽きる。そのため、この中間は坂路からコース主体の調教に切り換えてビッシリ攻め込んだ。中2週は[2・1・0・0]と間隔を詰めて使った方がいいタイプ。しかも先行力があり、良馬場の上がり勝負には滅法強い。
 予想を打った木曜午後の時点で日曜日は雨予報だったので道悪適性を考慮して3番手(▲)評価にした。本命に推したアスカトップレディは道悪(稍重〜不良:2・2・0・3)もこなせるので週末の雨予報も問題ない。先行して速い上がりが使えるのが持ち味で、高速決着にも対応できる。休養明け2戦目は[2・1・0・1]と状態面の上積みも見込める上に、全5勝を中2〜3週の短い期間で挙げている(今回は中1週)。大庭騎手も昨年の府中牝馬S(11番人気4着)に騎乗して手の内に入れており、須貝調教師も「お前に任せる」と全幅の信頼を置いていた。
 結果は○‐▲のタテ目決着になったが、アスカトップレディ(10番人気9着)は本来の先行策が取れず、馬群に沈んでいた。アスカトップレディに本命を打ったことに後悔はない。しかし、ファンのみなさんに納得できる結果を届けられず、自分自身に腹が立つ。口惜しさが募る敗戦だった。