「祭りのあと」

 「昨日取りましたか?」と大庭騎手に言われたので、「いいえ」と答えました。プロスペラスマム(東京12R8番人気3着)のことですか、いいえ、トーホウオルビスのことです。5月1日東京10R・アハルテケSで大庭騎手騎乗のトーホウオルビス(15番人気)が2着に入り、複勝では東京競馬史上1位の払戻金10,690円を記録した。
 週末、大庭騎手には「最近は行けないけど、逃げたら面白いかも(ハナを切ったときの連対率が55.6%)」と話したが、まさか本当にハナを切るとは…。今朝、大庭騎手に聞いたところ、陣営には「行けないかもしれないけど、スタートで出して行って欲しい」と指示されたとのこと。意外と大庭騎手はスタートが上手い。そして大庭騎手がハナを切ると、なぜか周囲が無用な競り合いを控える。ゲートが開いた瞬間、先頭に立つと、並びかけたカホマックスが2番手に控えて、最内から行きかけたスターボード、インペリアルマーチが抑えにかかった。スターボードと競った感じに見えた前半3Fは35秒7。実は同じダ1400mで行われた最終12R(古馬1000万)のプロスペラスマムの前半3F35秒8とほとんど変わらない。先週に遡れば、これまたダ1400m(古馬500万)で逃げ粘ったノボシャンパーニュ(東京7R15番人気2着)の前半3Fが35秒8だ。なんとまあ、ダ1400mで刻んだペースが500万、1000万、オープンとほとんど同じ。別々の馬でクラスも全く違うのに、大庭騎手は自分の体内時計に添って、正確なラップを刻んでいた。
 だから、東京12Rのプロスペラスマムのように西村騎手のシーガルプリンセスに突っつかれても全く動じない。なぜなら、ペースにブレがないからだ。ちなみに同じレースで2番人気のワーズワース(5着)に騎乗していた戸崎騎手は前が競っていると感じて、「ペースが速いと思った」そうだ。しかし、12Rに関しては安藤勝己騎手騎乗のジャズピアノ(3番人気1着)が容赦なく抜き去った。10Rのカジノドライヴでトーホウオルビスに差し返されたときに、大庭騎手が作り出すペースが遅いと見切ったのだろう。同じ失敗は2度繰り返さない。さすが、名手安藤勝己である。
 2010年以降、大庭騎手の平地での逃げ成績は[1・2・4・8](連対率20%、複勝率46.7%)。複勝回収率1261%はトーホウオルビスのおかげもあるが、昨年の京王杯2歳Sでもテイエムオオタカ(13番人気3着)で逃げ粘っている。逃げ馬で穴を出すときの特徴として(1)逃げ馬なのに近走はハナも切れない、(2)二桁着順が続いている、(3)メンバーを見渡して何が逃げるか読めない。そして(4)逃げるかどうかはゲートが開くまで本人もわからない。だからこそ、他の騎手も大庭騎手の逃げを捕まえていいのか、判断に迷う面がある。
 今朝、とある厩舎に頼まれて大庭騎手に特別競走の騎乗依頼をしたが、既に押さえられていた。日曜日の時点で騎乗予定がなく空いていると判断したが遅かった。東京開催は今週もジョッキーの絶対数が足りず、「木曜日の男」が早くも出番である。特に日曜日は新潟大賞典があり、柴田善、田中勝、江田照、三浦、武士沢騎手が新潟に遠征する。NHKマイルCが行われるので関西からトップジョッキーが集まるが、それでも中堅騎手の数は足りない。「春のオーバ祭り」は一年に二度あるかも。