無駄な一年

朝起きたら中国新聞の一面に「緒方辞任」の見出しがあるのを楽しみにしていた。
「緒方解任」「緒方退任」「緒方勇退」「緒方クビ」「緒方罷免」「緒方降板」「緒方お役ご免」「緒方お払い箱」
見出しは何でもいい。頼むからやめてくれ。
緒方がやめないので、スカパー!プロ野球セットを解約し、中国新聞の宅配購読をやめた。
緒方孝市が表紙を飾る『広島アスリートマガジン2014年12月号』も破り捨てた。

監督就任直後のインタビューで緒方孝市は「自分の中では監督1年目からが勝負だと思っています。目指すべき最大の目標は優勝です」と話していた。

しかし、今季最終戦に敗れ、3年ぶりのBクラス転落を招いた直後には
「優勝を逃しても最後まで3位になる可能性があった。4位になったが、チームが後退したとは思っていない」と開き直った。

ちょっと待て、緒方。
今年のカープはいつからAクラスが目標になったんだ。

黒田博樹が8年ぶりにメジャーリーグからカープに復帰。
今シーズンオフにメジャーリーグ入りを目指す前田健太とのダブルエースが実現した。
防御率1位の新外国人投手のジョンソン、覚醒した未完の大器・福井優也と共に、強力な先発陣を築いた。

球団は打撃陣の充実を図るために、入団1年目では球団史上初の年俸1億円超えの外国人選手(グスマン、シアーホルツ)を2人補強。
カープファンの反対を押し切り、恥を忍んで阪神自由契約になった新井貴浩も獲得した。
今年のカープはなりふり構わない大型補強で24年ぶりの優勝を狙っていた。

その証拠にファンの期待は大きく高まり、球団史上初めて200万人を突破した。
今季の主催71試合の総入場者数は211万人。
セパ両リーグ通じても巨人、阪神ソフトバンクに次ぐ、4番目の多さだ。

ちなみにセリーグを優勝したヤクルトの総入場者数が165万人。
神宮球場を本拠地とするヤクルトの場合、東京都の人口が1335万人。
一方、広島県の総人口は284万人。首都圏を本拠地とするヤクルトとは比べ物にならないぐらい、県民人口は少ない。
しかもレフトスタンドから3塁側までカープファンが半分を占める神宮球場とは違い、マツダスタジアムでビジターファンの来場は巨人、阪神戦以外は望めない。
それでも優勝への期待は広島県民や県外のカープファンの心を動かし、規格外の観客動員数につながった。

10月7日に、地元広島のRCCテレビ(TBS系)で放送された広島対中日最終戦(午後7時〜9時)の平均視聴率は44.5%(広島地区)。
カープの中継では今年1位だった3月27日のヤクルトとの開幕戦の35.1%を上回った。
占拠率が57.7%を占めたように、広島県民の半数以上がカープ戦を見ていたことになる。

広島県民の総意が集まった最終戦は3対0で中日勝利。
勝利を信じたカープファンの期待を今シーズン最悪の試合で締め括った。
打線は1安打しか打てず、今季17度目の完封負け。
中4日で奮投。7回125球無失点の前田健太を見殺しにした。

8回表から登板したセットアッパーの大瀬良大地が3失点を喫した。
これで9月29日のヤクルト戦から4試合に登板して計7失点。
前回投げた10月3日のヤクルト戦では3失点し、敗戦につながっている。
明らかに状態が悪い大瀬良を同点の8回表に起用した畝龍実投手コーチの責任は重い。
選手の調子の見極めができないコーチなんて必要ない。

試合後、大瀬良、中崎を起用したことについて畝龍実のコメントを見て愕然とした。
「今までやってきたことなので、大事な場面はこの2人で行くことに決めた」
黒田博樹、ジョンソン、福井優也ブルペン待機とは何だったのか。
ジョンソンはブルペンの様子がテレビに映ったときにカメラに向かってピースサインをしていた。
最初から使う気はなかったのだから、ブルペンに緊張感はなくなる。
大瀬良だけに重圧を背負わせる無慈悲な采配。
この一件だけでも緒方孝市と畝龍実は辞任に値する。
勝利への執念を見せず、無策で負けたのは敗退行為と取られてもおかしくはない。

試合後のセレモニーでカープファンから大瀬良に声援が送られたそうだ。
「お前のせいじゃない」。
その通り。敗戦の責任を取るのは選手を起用した緒方孝市の最後の仕事だ。

試合後、緒方孝市は「優勝するチームになるため、秋から鍛えたい」と話していた。
おい待て、緒方。
何で来年も監督やるつもりなんだ。
3位阪神和田豊監督が優勝を逃したことを理由に辞任するのに、4位の監督が何で続けるんだ。
1年目だから?
有能ならヤクルトの真中満監督や、ソフトバンク工藤公康監督のように1年目でも優勝できる。
選手引退後、5年間1軍でコーチ経験がありながら成果を出せず、過去2年間を下回る成績を収めた。
コーチ経験がなかった野村謙二郎1年目と比べれば、言い訳の余地はない。
即刻、辞表を出すべきだ。
緒方孝市がやめなければ、最終戦の敗戦に意味はない。
2015年シーズンはカープにとって無駄な一年だった。