ジャクソンの惨劇

10月29日(土)日本シリーズ第6戦。
広島東洋カープ北海道日本ハムファイターズに4対10で敗戦した。
対戦成績は2勝4敗になり、カープの2016年シーズンは幕を閉じた。

10月22日(土)日本シリーズ第1戦をマツダスタジアムに見に行った。
日本ハム先発大谷翔平を攻略し、5対1で勝ったが、内容的には薄氷を踏む勝利だった。

先発ジョンソンは6回途中1失点で降板。
投球内容は投球数123、被安打9、四死球2。

10月12日(水)クライマックスシリーズファイナルステージ初戦の横浜戦。
カープは5対0で横浜を破ったが、先発ジョンソンは9回3安打、投球数105で完封した。

日本シリーズでは中4日で第5戦の先発を予定していた。
首脳陣は100球前後で7回以上投げることを考えていただろう。
しかし、日本ハム打線は得点は出来なくても球数を投げさせる粘り強い攻撃をしていた。

ジョンソンは6月8日(水)交流戦日本ハムと対戦したが、6回3失点で敗れている。
投球内容は投球数110、被安打7、四死球4。
前回の対戦で試したジョンソン攻略法を日本シリーズでも実践していた。

ジョンソンは中4日で登板した第5戦では疲労の蓄積を理由に6回無失点、投球数95で降板した。
カープの先発ピッチャーが6回以上投げたのは第1戦のジョンソンだけだ。
先発ピッチャーが6回しか持たず、第2先発を用意しなかったことで、リリーフ陣に大きな負担がかかった。
ジョンソンの投球内容を踏まえて、緒方監督は中4日での先発予定を変えることを示唆したが、状況の変化に応じた臨機応変な采配はなかった。

そして迎えた第6戦。8回表4対4同点。
6連投のジャクソンがマウンドに上がった。
2死無走者から始まった「ジャクソンの惨劇」を忘れてはいけない。
精魂使い果たしたジャクソンが力尽き、無残に崩れていく。
そして思考停止に陥ったカープベンチは交代する意思もなく、ジャクソンを見殺しにした。

昨年のレギュラーシーズン最終戦で起こった「大瀬良の悲劇」*1の再現だった。
クライマックスシリーズ進出がかかった大一番。
8回表0対0から登板したセットアッパーの大瀬良大地が3失点。
中日に3対0で敗戦し、3年ぶりのBクラスに転落した。
大瀬良はシーズン終盤から明らかに調子を落としていた。
しかし、畝投手コーチは「今までやってきたことなので、大事な場面は大瀬良で行くことに決めていた」と話していた。

今年は投手運用に関して上手くやり繰りしていたが、最後の大一番で昨年の悪夢が蘇った。
頑なに勝ちパターンの継投にこだわり、7回今村、8回ジャクソン、9回中崎を固定。
今村、ジャクソンが6連投で投げる特攻登板につながり、リリーフ崩壊につながった。

日本シリーズの敗戦により、来年の課題が浮き彫りになった。
リリーフ陣の再整備は必要不可欠だ。

今年のドラフトでは慶応大学の加藤拓也投手を1位指名した。
巨人のストッパー澤村拓一のようなパワーピッチャー。
150キロ台の速球に加えて、縦の変化が使えるのが特長だ。
カープではセットアッパーで使うことを予定している。
現場は先発投手を要望したが、苑田聡彦スカウト統括部長の強い推薦で獲得が決まった。
もしかしたら、球種が少ないジャクソンが来年攻略される可能性を考えていたのかもしれない。
7月中旬に途中加入したデラバーをフェニックスリーグに派遣し、日本シリーズ登板に備えたのもジャクソンの保険だったからだ。
そう考えると、加藤のドラフト1位指名はリリーフ陣の選択肢を増やす有効な一手になる。

来年のセリーグ連覇に向けて我々カープファンは「ジャクソンの惨劇」について議論を尽くさないといけない。
もちろん、最高責任者の緒方孝市監督、畝龍実投手コーチは日本シリーズの投手運用について語る義務がある。
将棋には対局後に感想戦を行うが、野球でも試合後に最善手を検討する機会があってもいいはずだ。