「ファインプレー」辻三蔵の「ウィークエンダー
 どんなスーパープレーを見せても勝たないと意味がない。それがプロ野球の世界だ。だからこそ、スタルツ、前田健太の好投でカープが連勝したのは意味がある。ましてや、今日はホームゲームで3連敗を喫した巨人戦だ。前田健太が粘りの投球で踏ん張り、野手も最後まで集中力を切らさず、シッカリ守った。8回裏、松本をゲッツーに取った梵→東出→岩本のプレーは素晴らしかった。地味でも勝利に結び付くプレーが本当のファインプレーだ。
 今日は石井琢朗の先制タイムリー、天谷のツーラン、嶋の連続ホームランでオビスポをノックアウトした。この3人に共通しているのは明日、栗原が戻ってくれば、レギュラーポジションを奪われる危機感だ。栗原が3塁に入れば、石井の出番は減る。攻守でハッスルプレーを見せている岩本をレフトで使えば、天谷、嶋のどちらかが弾き飛ばされる。今日、打たなければ、明日がない。プロ野球選手として生き残るためには打つしかない。正当な競争がチームを強くする。
 天谷の打率がようやく2割(.208)に乗った。最近5試合で16打数7安打2本塁打と打っているが、ファンの間ではなぜ赤松を使わないのか、不満に思っている人もいるはずだ。確かに横浜戦で村田のホームランをもぎ取ったスーパープレーはもちろんのこと、センターの守備範囲は球界随一だろう。天谷のような派手なダイビングプレーはない。ダイビングをする前に、ボールの位置に入っているからだ。赤松は並の選手ならファインプレーみたいな打球も簡単なフライにしてしまう。打たれたと思った当たりが平凡なセンターフライなら投手も勇気付けられる。打撃も天谷(243打席)と同じ打席数(244)で打率.295、得点圏打率.321をマークしている。普通に使えば、ゴールデングラブ賞は確実だ。
 しかし、野村謙二郎にはそれがわからない。開幕当初から天谷にレギュラーとしての自覚を促すためにセンターで使い、赤松をレフトとライトで使った。最近はようやくセンター赤松、レフト天谷にしているが、ここ2試合は僅差にも関わらず、赤松を守備固めで使っていない。宝の持ち腐れだ。選手を生かすも殺すも監督次第だ。天谷も野村謙二郎に不振でも使われて、ファンの間でブーイングが飛んでいた。しかし、昨年は3割(94試合)、一昨年は135試合に出場していたように、カープファンの期待度が高い選手だった。野村謙二郎が意固地になって使い続けたことで潰れかかっていた。早い時期に二軍に落としていれば、これほど不調が長くなることはなかった。
 同じことは小窪にも言える。現在の打率は打率.204(65試合、本塁打1、198打席)。強打が期待される三塁手では失格の数字だ。守備でもスローイングミスが多く、ファンの信頼を失っている。しかし、開幕当初、梵が打てなかったときに小窪待望論が出ていたのは周知の事実。昨年が打率.295(70試合、183打席)、一昨年が.270(98試合、274打席)。こんな成績で終わる選手ではないのは誰もが知っている。だからこそ、二軍に落として、小窪の負けん気を引き出すべきだった。このままでは小窪の野球人生が終わってしまう。
 明日、栗原健太を一軍に上げる。そうなると、現在、一軍にいる三塁手・小窪か山本芳彦を落とさないといけない。普通ならスタメンで出た最近5試合で15打数6安打と打っている山本芳彦を残す。どこのポジションでも守れる堅実なプレーも魅力だ。自信を付けてきた選手を更に伸ばすのが監督の役割だ。昨日今日とスタルツ、前田健太に完投を要請して断られた野村謙二郎だが、岸本、大島に9回を任せることでストッパーとしての自覚と自信が付いてくる。小窪と山本芳彦、どちらを一軍に残すのか。選手の野球人生を生かすのも監督の仕事だ。監督のファインプレーに期待する。