「春のオーバ祭り」辻三蔵の「ウィークエンダー
 昔、武豊騎手が全12レースに騎乗したときにはニュースになったものだが、エージェント制度が定着した今では良くある出来事になっている。しかし、日曜日の東京で大庭騎手(今年5勝)が全12鞍に騎乗しているのは快挙ではないか。日曜日、全12鞍に騎乗するのは関東リーディングジョッキーの内田騎手(京都)と大庭騎手だけである。
 エージェントを付けていない大庭騎手がなぜ12鞍も乗れたのか。水曜日の想定時点で日曜日の騎乗依頼は3鞍(4、7、8R)しかなかった。ただ、日曜日の東京は平場でフルゲートに満たないレースが大半を占めており、新潟で出走できない馬が数多く回ってきた。しかし、G1当該日の3場開催で関東の有力騎手が京都に遠征して、若手騎手はローカルの新潟で騎乗する。いざ東京に使おうと思ってもジョッキーの絶対数が足りず、しかもリーディング上位騎手は早い段階に押さえられている(11鞍:吉田豊、後藤、三浦、蛯名、10鞍:戸崎、5鞍:安藤勝)。東京では上位と下位の力量差があり、中堅クラスで乗れるのは熊沢(11鞍)、柴山、武士沢(10鞍)、そして大庭騎手になるのだろう。
 大庭騎手はその中でもエージェントがいないので本人に直接頼める。また、有力騎手のエージェントがラインの騎手が乗れないときに「ジョーカー」として使っているのも騎乗依頼が増えた要因だろう。ちなみに昨年のスイートピーS当該週も大庭騎手は10鞍に騎乗している。
 大庭騎手は日曜6Rで確勝級のアルデュールに騎乗している。最初は土曜6Rを松岡騎手で出馬投票したが、抽選除外になり、再投票で回ってきた。有力騎手が軒並み押さえられているため、「最後の切り札」としてチャンスが回ってきた。さすが、木曜日の午後、出馬投票所で騎乗依頼が殺到する「木曜日の男」である。大庭騎手が吉田照哉オーナーの馬に騎乗するのは今回が3度目。昨年のアルゼンチン共和国杯(ジャミールに代打騎乗)で2着して以来の縁になる。
 大庭騎手と言えば、先週のノボシャンパーニュ(東京日曜7R15番人気2着)のように、思わぬ大穴を出す。先週、大庭騎手とノボシャンパーニュについて話したときは「ケイコの動きは良かったな。休養前より状態はいいかも」(三)→「厩舎の人もデキはいいと話していました」(大)→「大庭と手が合うし、抜けた馬もいないから一発あるかもな」(三)→「頑張ります!」(大)で万馬券。これが感性で乗る大庭騎手の凄さである。
 じゃあ、今週はどこで大穴を出すのか。そこはグリーンチャンネル『KEIBAコンシェルジュ』の「今週のオーバ」で話すのでお楽しみに。「土曜日のオーバ」は『競馬道On Line』「プレミアム予想コーナー」で書いています。一年に一度の「春のオーバ祭り」を目一杯楽しみましょう。