8月17日を忘れない!辻三蔵の「ウィークエンダー
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 8月17日金曜日、馬インフルエンザの影響で競馬が中止になった。あれから2週間後、上越新幹線の車中でこの原稿を書いているとは想像もつかなかかった。正直、倒産を覚悟していた。1945年に創刊して以来、戦後日本と共に歩んできた『ホースニュース馬』。幾度となく、倒産の危機を迎えながら、何度も生き延びてきたが、今回ばかりは絶体絶命だった。
 競馬が開催されなければ、競馬専門紙は新聞を刷れない。しかも馬インフルエンザは中央だけでなく、地方競馬にも広がっていった。『馬』社は中央3場だけでなく、南関東、道営、ばんえいで新聞を発行している。しかし、競馬が日本全国で中止になれば、収入源は全くなくなる。もし、8月中に中央競馬が再開されなければ、『馬』社は永遠に夏休みを取ることになっていたはずだ。
 もちろん、『馬』社だけの問題ではない。他の専門紙も多大なダメージを受ける。競馬の再開にメドが立たなければ、テレビや雑誌も伝えることがなくなる。未来があるからこそ、競馬は過去を語ることができる。過去のレースを振り返るのは未来へと繋がるからだ。来年のダービーを思い描きたくても競馬が行われない現状では何も語れない。休刊に追い込まれる雑誌や、競馬中継がなくなるテレビ局もあっただろう。
 週中、競馬ファンの情報源である日刊紙も例外ではない。最初の1、2週間は馬インフルエンザ問題で凌げるが、再開が長期化すれば、記事はなくなる。日刊紙は競馬がなくても野球やサッカー、朝青龍、芸能と他にネタはいくらでもある。当然、一番、売れるネタを一面にするので、話題性のない競馬にこだわる必要はない。そうなれば、見開き二面のところか、一面になり、最終的には他の公営ギャンブルと一緒になるかもしれない。
 競馬ファンの気持ちも心配だ。最初は競馬がない週末が寂しく思うが、1か月も経てば、競馬がないことに慣れてくる。競馬はホビーだ。だから、他に趣味が見つかれば、心が離れるかもしれない。もし、競馬が再開されでも今まで愛読していた競馬新聞、雑誌、Web、メディアがなくなっていれば、興味を失う。競馬産業が巨大化したことで依存している人が増大した。その分、競馬が中止になったときのダメージは大きい。再開したときにファンを取り戻すためには、今まで以上にメディアの力がいる。しかし、そのときには競馬専門のメディアが大幅に減少している。一般メディアも需要がなければ、競馬は取り上げない。もはや、競馬ブームなんて夢の話だ。中止前に戻るどころか、業界全体が縮小し、滅んでいくだろう。競馬がなくなる。そんな恐怖感が襲ってきた。
 それだけに1週間で競馬が再開されて、安心した。昨日の新潟競馬場では開門前から多くの人が並んでいた。ファンのみなさんが競馬を楽しんでいる姿を見ると、今までと変わらないように思える。しかし、勘違いしてはいけない。今回の馬インフルエンザ騒動を肝に銘じないと、また、同じ過ちを繰り返す。「今回の馬インフルエンザは競馬に携わる人間に課せられた教訓だ」と奥平、古賀慎師は話していた。再開されたとはいえ、ファンの信頼を得たとは言えない。今までと同じ気持ちでやっていてはいけない。我々記者はこれまで以上に気持ちを引き締めて、記事を書かなければいけない。
 新潟では仕事の合間を縫って、馬券を買った。馬券が当たった、外れたと一喜一憂できるのも競馬が行われているからだ。今、競馬ができる幸せを噛み締めている。しかし、絶望感に襲われた8月17日を忘れてはいけない。同じ過ちを繰り返せば、今度こそ、競馬はなくなる。私は8月17日を忘れない。
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