革命のプレリュード!辻三蔵の「ウィークエンダー
辻ちゃん、スゴイ馬が入ってくるよ!」
 奥平調教師が興奮気味に話していたのがちょうど1年前。当時、500万条件だった馬がわずか1年足らずで重賞を制した。セントウルSを勝ったアルティマトゥーレのことである。
 ジョッキーに愛される馬だ。転厩緒戦で手綱を取った三浦皇成騎手はその素質に惚れ込み、動向をいつも気にしていた。能力の高さを見抜いた横山典弘騎手は鈴鹿特別で本人自ら、奥平調教師に電話して騎乗が決まった。毎週、厩舎に様子を見に来るほど、惚れ込んでいた。
 セントウルSでスリープレスナイトに騎乗していた上村騎手もその一人だ。豊橋特別を楽勝したときに、「この馬、メッチャ走る!」と興奮気味に話していた。セントウルSで上村騎手はアルティマトゥーレを目標に、レースを進めていた。直線ではアルティマトゥーレに馬体を併せに行った。松岡騎手も一瞬、スリープレスナイトに馬体を寄せに行ったが、相手が来ないと見るや、ゴール目がけて追い出した。
 木曜午後、松岡騎手は「逃げ馬を行かして、好位につける競馬をします。スピードがあるから、楽に先行できるでしょう。リズム重視で乗りたいですね」と話していた。今回は思い描いた通りの競馬ができたはずだ。それでも前半、若干、行きたがったのはペース(前半3F33秒8)が遅かったからだろう。外国馬が参戦するスプリンターズSは前半3F32秒後半のハイペースになる。ペースが速くなる分、レースがしやすいのは間違いない。
 担当する三浦厩務員は「木曜日の時点で496キロ。輸送込みで前走と同じ位の馬体重(488キロ)で出走できる。馬体を戻しながらの調整だった阪神牝馬S(482キロ)よりも、状態は間違いなくいい。思い通りに仕上がったよ」と胸を張った。
 馬体重は486キロ(−2キロ)。イレ込みが目立った阪神牝馬Sと違い、パドックでも落ち着き払っていた。三浦厩務員の計算通りに仕上がっていた。しかも、これで「9分の状態」(三浦厩務員)なのだから恐れ入る。スプリンターズSに向けて、おつりを残している。トライアルレースとして、完璧な仕上がりだった。
 レース後、奥平調教師は「まだ、次がある」と気を引き締めていた。3週間後のスプリンターズSではシーニックブラスト、セイクリッドキングダムの外国勢を迎え撃たないといけない。スリープレスナイトの巻き返しもある。喜びに浸っている余韻はない。
 『穴党OnLine』の予想コラムで私は、アルティマトゥーレに本命を打った。そのときに、「同じ5歳世代のスリープレスナイトカノヤザクラローレルゲレイロが引っ張るスプリント界。遅れてきた大物が革命を起こす」と書いた。セントウルSは革命のプレリュードだ。