両者痛み分け

 落合博満ならカープの息の根を止めていただろう。
 反撃の糸口すら与えず、完膚なきままに叩きのめしたはずだ。開幕3連敗を喫したカープにホームゲームでジャイアンツを迎え撃つ気力はない。定位置に落ち込んだカープは浮上の機会すら掴めず、4月頭の時点で今シーズンは閉幕していた。
 しかし、中日対広島開幕3戦目は2対2のドローに終わった。中日2点リードの8回表ツーアウト1、2塁。セットアッパー浅尾から6番松山、7番廣瀬が連続タイムリーを放った。この3連戦でチャンスをことごとく潰していた松山、廣瀬が復調のキッカケを掴んだ。そして、復活に賭ける中日山本昌の2年ぶりの白星がなくなり、ルーキー野村祐輔の初登板を黒星にしなかった。
 同点に追い付く予兆はあった。中日1点リードの7回表。監督高木守道は4番山崎、5番和田をベンチに下げて、守備固めに入った。1対0で逃げ切れる自信があったのだろう。7回裏に2点目が入ったときには中日ベンチには笑顔が溢れて、勝利を確信している雰囲気だった。
 8回表に登板した浅尾への信頼は揺るぎないものがある。しかし、前日の広島戦で打ち取ったのは丸、堂林、石原。1試合で6三振を喫したこの3人は打撃の体を成しておらず、参考にはならない。余裕の表情を浮かべる中日ナインに比べて、浅尾の強張った顔が一層気になった。球が走っていない。本人は昨日から感じていたのだろう。
 2対2の同点になった8回裏、中日は4番からの攻撃。4番堂上直倫はショートゴロ、5番藤井は見逃し三振、6番井端も空振り三振に終わった。8回裏から登板した今村が三者凡退に切った。もし、4番山崎、5番和田なら反撃ムードが高まり、球場全体のボルテージも上がっていたはずだ。
 中日は勝利への過信が慢心になり、白星を落とした。しかし、カープも屈辱を跳ね返す意地は見せたが、勝利を掴んではいない。両者痛み分け。この言葉だけが胸に残った。