美浦での取材を終えて、急ぎ帰宅する。
前田智徳の引退試合を見るためだ。
幸いにも7回裏、前田が打席に立つ前に戻ってこれた。
8回裏の最終打席、9回表にライトに守備につく姿を見ることができた。打つ姿も守る姿も真剣なのだが、どこか楽しんでいる雰囲気がある。苦笑いの前田。泣き笑いの前田。笑顔の前田。球場を包む観客も涙ではなく、笑顔に包まれている。
Bクラスに沈んでいた15年間。旧広島市民球場、マツダスタジアムでは毎年、引退試合*1が行われていた。野村謙二郎、浅井樹、緒方孝市、佐々岡真司、高橋建、石井琢朗。スタンドを埋め尽くした満員の観客は同じでも例年とは雰囲気が違う。
Bクラスが続くことへの責任。夢半ばでチームを去る寂しさ。悔恨を球場に残したまま引退することの歯痒さが伝わってきた。
「カープは16年ぶりにAクラスに入ることができました。この節目を強いカープとなって、未来のカープが明るいことを祈って引退します」
前田は未来を後輩に託して引退することができた。前田の言葉に導かれて明るい未来が感じられるこそ、球場に笑顔が溢れてくる。
ありがとう、前田。