無策は罪

4月15日(水)の東京ヤクルトスワローズ広島東洋カープ4回戦。
広島カープはヤクルトに1対0で完封負けを喫した。
今期2度目の完封負け。
エース前田健太の8回1失点の力投もむなしかった。
開幕15試合を終えて5勝10敗。
昨年の同時期(10勝5敗)と比べれば間逆の成績になっている。
先発陣は奮闘している。
全15試合中13試合でクオリティ・スタート*1を達成。
セリーグ2位の防御率2.33が示す通り、開幕前の評判通りの活躍をしている。

問題は打撃陣。
昨年はエルドレッド本塁打を量産。15試合で15本のチーム本塁打を放っていた。
今年のチーム本塁打は菊地の2本だけ。
得点力のなさをベンチが戦略で補うわけでもなく、ランナーが出ても漫然と打たしているだけだ。

「開幕からあと1本出ればという場面で出ていない」
緒方孝市のお決まりの言葉だ。
そもそも発言自体が間違っている。
オープン戦からあと1本が出ていない。
2月中旬から始まった紅白戦、練習試合でも「貧打」が問題になっていたのに、何も対策を立てていなかった。

無策は罪だ。
4月15日(水)のヤクルト戦。
8回表無死一塁。
2番手のオンドルセクは地方球場特有の柔らかいマウンドを気にしてコントロールを乱していた。
そもそも、オンドルセク自身、神経質な部分があり、ランナーが出ると落ち着きがなくなる傾向がある。
大雑把なメジャーリーグのベースボールから、相手の隙を突いてくる日本野球に移籍した新外国人投手が陥る最初の試練だ。
カープでもヒース、ザガースキー、ジョンソンがランナーが出た瞬間、ナーバスになる場面をベンチが良く知っているはずだ。

2ボール、ノーストライク。
待球で相手の自滅待ち、あるいは偽盗で揺さぶり、打者優位なカウントでエンドランを仕掛ける作戦もあっただろう。
しかし、ベンチが取った手段は「無策」。
4番ロサリオは簡単に打ち上げてライトフライ。
「早打ち」「悪球打ち」「無駄打ち」の5番松山がアッサリと併殺打を放ち、チャンスは一瞬にして潰えた。

メジャー出身のグスマンやシアーホルツならプライドを優先するのもわかるが、日本での実績が1年しかないロサリオを優遇する必要はない。
「選手を信頼している」と言えば聞こえがいいが、「選手に責任を押し付けている」とも取れる。

「選手は悪くない。(起用した)監督の責任です」
緒方孝市の決まり文句だ。
意味を履き違えないで欲しい。
スタメンに選手の名前を書くことが仕事ではなくて、選手が「打ちやすい環境」を作戦を通じて作り出すのがベンチの仕事だ。

新外国人野手のシアーホルツやケガから復帰予定のエルドレッド、グスマンの「長打待ち」の姿勢では今までと戦い方は全く変わらない。

今日からでも遅くない。
接戦を落としている理由を見出すには「今までの15試合」を振り返ればいい。
相手チームはカープが優勝候補と見定めて研究し尽くした上で弱点を突く野球をしている。
カープの攻撃時間よりも相手の攻撃時間が長いのは「カープが嫌がる野球」を徹底的に仕掛けているからだ。
カープは勝つときも負けるときも常に接戦。
気持ち良く勝つことができないから選手もファンも疲弊していく。

前田健太黒田博樹の二大エースが揃い、カープ史上最大の外国人選手の補強を進めた今年が優勝する最大の好機だ。
カープファンにも「今年ダメなら未来永劫優勝できないのではないか」という危機感がある。
だからこそ、緒方孝市には決死の覚悟で「監督」という仕事に取り組んで欲しい。
今年のカープに監督を育成する時間はない。

*1:先発投手が6回以上を自責点3以内に抑えること